いま、家には万理花も、お父さんも、お母さんもいないんだ!

 じゃあ、家で咲也くんとふたりっきりに!?

 イケナイ妄想がはじまりそうになって――。

「あっ――」

 ブルームスがいるじゃん!

 わたしたちの恋愛にNGだしてる張本人が!

 がっくりと肩を落としていると。

「どうしたの?」

 咲也くんが目を丸くしている。

「ううん、なんでもないの!」

 両手のひらを激しくふると、咲也くんは眉を下げて、

「おれ、明日からゴールデンウィークの終わりまで、家族で北海道に旅行に行っちゃうんだ」

 と切りだした。

「北海道! いいなあ。うちは妹が受験で、どこにも連れていってくれないんだよ」

 口をとがらせると、クスッとする咲也くん。

「開花町に戻ってきたばかりだから、おれはゆっくりしたいのに、うちの親がやたらアクティブでさ。大変だよ。それに……一千花センパイと会えないのが残念だな」

 ドキッと、心臓が跳ねあがる。

「わたしも……さびしい……」

 咲也くんの瞳を見つめながら、すなおな感情を吐きだす。

 ポンと、わたしの頭に手をのせてきて、やわらかくほほ笑む咲也くん。

「またすぐ会えるさ」
「うん……」
「それじゃあ」

 と(きびす)を返して歩きかけた咲也くんは、またわたしに向きなおった。