「でも……」

 助けを求めるように咲也くんを見たけど、

「もらっておきなよ」

 って、にこやかに言うばかり。

 結局、ワンピースをいただいてしまった。

 しかも、持って帰るセーラー服を入れる袋までもらって……。

 何度もお礼を言って、咲也くんといっしょにお店をあとにしたんだ。


 咲也くんは、わたしの家まで送ってくれた。

「ワンピースもらっちゃったよ。ホントにどうしよう……」

 うれしさと困惑が入りまじった声を出すわたし。

「めいめいはさ、うれしかったんだと思うよ。イトコのデートの相手が、楽しそうに帰ってきたから……。遠慮しないで受けとってあげてよ」
「うん……。芽依さんは、咲也くんのことをかわいがってるんだね」
「まあ……そうなるかな……」

 照れたように、頬をかく咲也くん。

「あっ、ここがわたしの家なの……」

 もう自分の家に着いてしまった。

「そう……」
「送ってくれて、ありがとう」

 遠回りなのに、わざわざ送ってくれた咲也くん。

 あっ、家に上がってもらって、なにか冷たいものでも……。

 それから、お母さんが「いっしょに夕飯でもどう?」って言ってくれて――。

 わずか数秒のあいだに、そんな妄想をしてしまった。

 小百合センパイの影響だよ、これはっ!

 妄想を打ちきったわたしは、ガレージに車がないことに気づいた。

 ああっ! たしか今日、万理花の塾で三者面談があるとか言ってた!