「わたし、咲也くんを信じてるから」
「一千花センパイ……」
「わたしのナイトだもんね。しっかり守ってね」
「ああ、まかせてくれ」

 力強くうなずく咲也くん。

「でも、守られるだけじゃイヤだな。魔法少女だったもん。そりゃあ、魔力ゼロになっちゃったけど、魔物をこわがってたら、つけこまれる気がする。咲也くんといっしょに戦うよ。魔物の呪いなんか、吹きとばしてみせるっ!」

 腕に力を入れて、力こぶをつくると、咲也くんはニコッと笑顔になった。

 花が咲いたような、まぶしい笑顔――。

「ありがとう、一千花センパイ」

 咲也くんは腰をかがめると、わたしのおでこにキスをした。

 わわっ!

 咲也くんのくちびるが、わたしのおでこにふれて、そして離れる――。


「おれの大切な人だっていう(しるし)をつけさせてもらったよ。魔物どもには指一本たりとも、ふれさせないからな」


 いたずらっぽい笑みを浮かべる咲也くん。

 わたしにとっても、咲也くんは大切な……。

 胸がきゅんきゅんと苦しくて、口から出かかった言葉は、引っこんでしまった。

 だけど……わたし、この日のことは、ぜったいに忘れないと思う。

 忌まわしい日なんかじゃなくて、とっても素敵な日!

 空には、オレンジ色の光が差しはじめていた。