「……いいんだよ、咲也くん。そんなに自分を責めないで。ちょっと苦手になっちゃった程度だし、そもそも咲也くんのせいじゃない」

 うなだれる咲也くんの背中に、そっと手をそえる。

「いや、魔界軍のリーダーは、おれだったんだよ。おれの責任だ。ごめん、一千花センパイ」

 こっちを見た咲也くんの、深い悲しみに満ちた表情に、胸がしめつけられる。

「――っ」

 とつぜん、咲也くんはうめいて、左目をおさえた。

「くそっ、まただ! また強い魔力を感じる! こっちを見てやがる!」
「ええっ!?」

 また咲也くんの左目が魔眼になってる!

 わたしは立ちあがって、あたりを見まわした。

 遠くに家族連れが何組か歩いているくらいで、怪しい存在はいない。

 そのとき、横なぐりの突風が吹いた。

 風になびく髪と、めくれあがるワンピースのすそを必死におさえていると――。

「あぶないっ!」

 咲也くんがさけんだ。

「えっ……?」

 風にあおられた立て看板が、わたしに向かって飛んできたんだ!

「きゃあ!」

 悲鳴をあげて、体をこわばらせるわたし。

 サッと、咲也くんが、わたしをかばうように立ちはだかって――。

 ガンッ!

 咲也くんは、立て看板を蹴りとばしたんだ。