「ごめんね、一千花センパイ。知らなかったとはいえ、せまいところが苦手なら、観覧車なんか、誘うべきじゃなかった」

 観覧車の運転が再開され、無事に降りたあと、わたしたちはベンチで休んでいた。

 咲也くんが買ってくれたペットボトルのお茶を飲みほし、ふうっと息をつくわたし。

 わたしは、すっかり落ちつきを取りもどしていた。

「もうだいじょうぶだから、ホントに気にしないで」

 明るい声を出しても、咲也くんは表情をゆるめない。

 せっかくのデートが、暗いムードにおおわれるのはイヤだよ。

 今日は、咲也くんの誕生日なんだし!

「…………まさか、テュポーンが原因で……?」

 ハッとしたように、目を見ひらく咲也くん。

 迷ったけれど、首をタテにふるしかなかった。

 咲也くんは、みるみる悲しげな表情になり、黙りこむと。

「じゃあ……トカゲが苦手なのは、サラマンダーのやつのせい?」

 咲也くんのなかで、すべてがつながってしまったみたいで。

 わたしがこくりとうなずいたとたん、咲也くんは頭をかきむしった。

「おれ、一千花センパイのこと、ぜんぜん見えてなかった! なにやってんだ、おれ!」

 自分自身への怒りを爆発させる咲也くん。