わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

 魔神リュウトが、姿をあらわしたんだ。

「な、なぜ解放するのですか、リュウトさま!?」

 うろたえるテュポーンに背を向ける魔神リュウト。

「ボクの美学に反するからだ。魔法少女アイカよ、テュポーンに勝ってみせろ。そうすれば、残ったボクが自ら、君の相手をしよう」

 そんな言葉を残して、魔神リュウトは黒い霧となって消えた。

 あのままだったら、わたしは負けていたし、開花町はもちろん、世界は闇に染めあげられてたよ。

 今にして思えば、魔界軍のリーダーとしては、魔神リュウトは甘いところがあった。

 魔神リュウガの魂と、乙黒咲也くんのやさしい心が、常にせめぎあっていたんだ。

 そんなことを思いだしていたら、手足のふるえはおさまっていた。

 甘いアーモンドのような匂いが、鼻をくすぐる。

 あっ、これは咲也くんのボディシャンプーの香りだ。

 わたし、この匂いに気づかないくらい、パニックになってたんだね。

 ずっと握ってくれていた手を、ぎゅっと握り返すと。

 わたしは、となりの咲也くんの顔を見あげた。

 やさしくわたしを見つめる瞳が、そこにあったんだ。