わたしはカバンを手に持って、寝そうになってるブルームスに話しかける。

「今日もついてこないの?」
「うん、やめとく~。それより、今日から二年生でしょ。しっかりね。最初が肝心よ~。イケメンとつきあえるよう、しっかりやんなさい」
「わたしなんか、イケメンには相手されないよ」

 返事はなくて、早くも寝息が聞こえてきた。

「行ってきます」

 小声で言って、わたしは部屋を出た。


 最近のブルームスはずっとあんな調子だ。

 わたしが魔法少女アイカだったころは、もっと元気で、活動的だった。学校にもよくついてきたしね。

 その姿はわたしにしか見えないから、だれかに見られて困る、ということもなかったし。

 魔界軍との戦いが終わって、気が抜けちゃったのかな。

 毎日、わたしの部屋から出ないでお菓子食べたり、漫画読んだり、それこそ猫みたいに寝てばっかりで、グータラしてる。

 元々、ブルームスは花の女神さまから(つか)わされた使者で、わたしに魔法のステッキを与えるためにブルームガーデンからやってきたんだ。

 ところが、その故郷に帰れなくなってしまった。

 その寂しさから、無気力になっちゃってるんだと思う。

 すっかり体重も増えて、今や立派なぽっちゃり猫だ。

 なんとか帰してあげたいけれど、魔力ゼロのわたしにはどうすることも……。