「実は……せまい場所が苦手で……」

 わたしは、そう言うのが精一杯で。

「閉所恐怖症……?」
「そう……みたい……」

 息切れさせながら答えると、咲也くんはジャケットからハンカチを取りだし、わたしの額の汗をぬぐってくれた。

「肩にもたれて、リラックスしてなよ。無理にしゃべらなくていいからね」

 言われたとおり、わたしが咲也くんの肩にもたれると、ぎゅっと手を握ってくれて。

 わたしが閉所恐怖症になっちゃったのって、考えてみれば、魔界軍の幹部【風のテュポーン】が原因だ。

 魔法少女アイカとして戦っていたころ、テュポーンの(わな)にハマり、せまいロッカーに閉じこめられたんだ!

 そのときの恐怖が残っていて、いまだにエレベーターとか、せまい空間が苦手。

 でも……こんなにパニックになるのは、はじめてかもしれない。

 咲也くんは、わたしの気をまぎらわそうと、神戸にいたころの面白い体験談を話してくれている。

 やさしいね、咲也くん。

 あれ? テュポーンは、わたしをロッカーに閉じこめて、魔力で封印してしまった。

 わたし、どうやって脱出したんだっけ?


「閉じこめられたまま、おまえは死んでゆくのだ!」

 テュポーンの高笑いに絶望したとき――。

「閉じこめたまま、魔法少女の死を待つというのか? 下劣な戦いをするな、テュポーン!」

 テュポーンを叱りつける気品ある声が響いて、わたしは解放された。