幸せな空気に満ちていた観覧車のゴンドラは、一転、緊張が走っていた。

 魔物が、わたしをねらってる!?

 しかも、かなり強い魔力をもった魔物らしい。

 生き残ってる魔物は、大したことないんじゃなかったの!?

 体をこわばらせていた、そのとき――。

 ゴンドラが、激しくゆれた。

「きゃあ!」

 わたしは悲鳴をあげて、咲也くんの腕にしがみついた。

「突風だ! しっかりつかまってて!」

 咲也くんは、わたしの背中に手をまわし、ぎゅっと抱きしめた。

 激しい横ゆれがつづき、

「やだ、やだ、こわいよ!」

 と、目をつぶって、咲也くんの胸に、顔を押しあてるわたし。

 永遠にも思われた時間――。

「……ふぅ、おさまったみたいだね」

 咲也くんの声で、ゴンドラのゆれが止まったことに気づく。

 よ、よかったぁ……。

 てか、わたし、超大胆なことを!!

「ご、ごめんっ!」

 あわてて、咲也くんから体を離す。

「あれ、もうおしまい?」
「おしまい!」

 いたずらっぽい表情の咲也くんに、怒ってみせる。

 でも、わたしを不安がらせないよう、軽口をたたいているのは、わかってる。

 だから、本気で怒ったわけじゃないよ。

 すると――。

 ゴンドラのなかのスピーカーから、係員の声が響いた。

「えー、ただいま、強風のため、運転を緊急停止しております。安全が確認できるまで、運転を停止させていただきます。そのままお待ちください」