「誕生日おめでとう、咲也くん」

 わたしの口から、自然とお祝いの言葉がこぼれ出る。

 今日は、咲也くんが、この世に生まれ出た、おめでたい日なんだよ。

 忌まわしい日なんかじゃないよ。

 咲也くんは、少しとまどった表情になったけれど、

「ありがとう」

 って、照れくさそうに返してくれた。

 そのとき――。

「ううっ……」

 急に眉をしかめた咲也くんが、左目をおさえた。

「ど、どうしたの!?」

 びっくりして、咲也くんの背中に手をそえるわたし。

「……くっ……左目が……魔眼がうずくんだ……」
「えっ、魔眼が!?」
「今までとはちがう。とてつもない魔力を感じる……!」

 咲也くんはうめきながら、おさえていた手を外した。

 まがまがしい光をはなっている魔眼が、あらわになる。

「一千花センパイを、どこか離れたところから見てやがる!」

 荒々しい声を出して、とり乱す咲也くん。

 不安の波が、一気に押しよせてきた。

 なにか、よくないことが起きる気がする!