じわじわとゴンドラは上がっていき、さっきまで見てまわっていた花壇や木を見下ろせる高さになった。

「今日はありがとね、一千花センパイ」

 やわらかい声で、ふいに感謝されてしまった。

「ううん、こちらこそ、ありがとう……だよ。誘ってくれて、うれしかったよ」

 外の景色を見つめながら、言葉をつづけるわたし。

「ひさしぶりに、ここに来られたしね。大好きな花をたくさん見られて、ご飯もごちそうになって、芽依さんにはこんな素敵なワンピースを着せてもらったし。あと……咲也くんといっぱい話せたし……」
「おれもホントにうれしいんだ。忘れられない誕生日になったよ」

 え……? ええええええっ!

「た、誕生日だったの!?」

 景色どころではなくなって、あわてて咲也くんに向きなおる。

「うん、今日で十三歳」

 ゴンドラの窓から目を離さないで、他人事(ひとごと)のように言う咲也くん。

「どうして言ってくれなかったの!?」

 知ってたら、もっと――。

 咲也くんは、ようやくわたしを見て、

「おれにとっては、誕生日なんて、ちっともめでたくないんだ」

 って、さびしそうに笑ったんだ。

 誕生日が、めでたくない……? どうしてそんな……。

「今日――四月三十日はね、乙黒咲也が生まれた日であり、魔神リュウガが魔神リュウトとして復活した、()まわしい日でもあるんだぜ?」