わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

 咲也くん、いま、なにか言いかけてごまかした……よね?

 でも、わたしは気づいていないフリをして、首をかしげた。

「どうして?」
「ガーベラの花言葉は『希望』『前進』だって言ってたじゃん? 御堂センパイは、前向きで明るいイケメンだって。おれにはないものを御堂センパイは持ってるんだ」

 ため息をついて、髪をくしゃっとする咲也くん。

「おれ、うしろ向きなんだよなぁ。フツーになったつもりでも、魔眼がそれを許さない。魔眼がうずくたび、魔物が見えるたび、おれは魔神だったんだと思い知らされる。魔物が誘惑してくるたびに、おれはフツーじゃないんだって……」

 くちびるをかみしめる咲也くんの横顔に、胸がぎゅうっと、しめつけられる。

「ブルームスに大見得(おおみえ)を切っちゃったけど、過去にとらわれてるのは事実なんだよね」
「咲也くん……」
「スズランには毒がある……か。門倉部長って鋭いよね。おれの本質を見ぬかれたような気分だったよ」

 妄想モードになってハイテンションの小百合センパイが脳裏(のうり)に浮かんで、思わずクスッとした。

「いや、あれは、咲也くんにはミステリアスな魅力があるって言いたかったんだと思うよ」
「そうなの……?」
「まあ、あの人は時々、鋭いこと言うけどね。今朝だってね、わたしと咲也くんの――」

 あっ、これはマズい!

 思いなおして、あわてて言葉を切る。