「おいしいでしょ?」

 咲也くんがたずねてきたけれど、味なんてどうでもよくなってた。

「うん、おいしい」

 うなずいたものの、間接キスしちゃったことで頭のなかはいっぱい!

 ラベンダーの香りが広がったことだけは、かろうじてわかった。

 わたし、大胆なコトしちゃったんじゃないかな……?

 モジモジしていたら、咲也くんが小首をかしげた。

「どうしたの? 早く食べないと、すぐ溶けちゃうよ?」
「う、うん!」

 芽依さんに借りたワンピースを汚しちゃったら大変だ。

 早く食べなきゃ!

 それにしても……すっかり咲也くんのペースになってる気がする。

 わたしの心は、かき乱されっぱなしだよ。


     ◆


 それからまた、わたしたちは手をつないで、花や木を見てまわった。

 パンジーにクレマチス、さらに満開のライラックやハナミズキ――。

 わたしたちは、いろんなことをおしゃべりしたけれど、話題は【過去】ではなくて、【現在】の園芸部のことが中心だった。

「咲也くん、すっかり蓮くんと仲良しね」
「うん。御堂センパイ、すごくイイ人だよね」
「ちょーっと、ちゃらんぽらんなトコあるけどね」

 苦笑いするわたし。

「一千花センパイは、おれのこと、モテるって言ってくれたけど、御堂センパイこそモテモテでしょ」
「うーん、モテてるっていうより、面白がられてるような……?」
「そうかなぁ?」

 納得いかない様子の咲也くん。