はずかしくなって、ごまかすようにせきばらいしたけど、咲也くんはなにも言わない。

 よかった、気づかれてない!

 すると、咲也くんはぽつりと言ったの。

「花より団子かぁ」

 わたしは、にぎっていた手をはなすと、無言で咲也くんの腕をぎゅうっとつねった。

「いってぇ!」

 飛びあがる咲也くん。

 フンだ、もう知らないっ!

「ごめん! 冗談だって!」

 咲也くんは腕をさすりながら、平謝り。

 だけど、わたしはツーンとそっぽを向いたまま。

 乙女をからかうなんて許せない。

「おっ、あそこに売店あるじゃん。なんかおごるから許してよ」

 おごるから――に耳がぴくりと反応して、わたしは機嫌をなおした。

「ホント!?」
「もちろん」

 わたしたちは足を売店へと向けた。

「もうとっくにお昼すぎてるもんな。ごめんよ、気づかなかった」
「咲也くんは、おなかすいてないの?」
「一千花センパイとデートできてるんだぜ? 興奮して、おなかいっぱいだよ」
「~~~~っ」

 また、胸がキュンとした。

 キザな台詞なのに、咲也くんが言うと、そう感じさせない。
 すなおに、スッと胸に入ってきて、心をゆさぶってくるんだ。