「万理花! もう許さん!」

 わたしは万理花に飛びかかり、首元にがっちりとスリーパーホールドをきめた。

「ぐえっ! 苦しい……ギブ、ギブ!」

 万理花が悲鳴をあげると、お母さんがわたしの分の朝食をテーブルに並べて。

「こーら、朝からケンカしないの。一千花、早く食べちゃいなさい。遅刻するわよ」
「はーい。……お父さんは?」

 わたしは、イスに腰かけながらたずねた。

「もうとっくに会社行ったわよ。万理花がブロッサム学院に受かったらお金かかるもの。昇進するんだって、張りきってるわ」
「へえ」
「それにしても……今日から一千花は中二、万理花は小六だもんね。成長は早いものだわ」

 目を細めて、わたしたちを見つめるお母さん。

「お姉ちゃんは、あまり成長してないけど……」

 ぼそっと万理花が言った。

「なぬっ!?」

 今度はコブラツイストをかけてやろうか。

「おおっと! あぶないっ! ごちそうさま!」

 殺気を感じたらしい万理花はあわてて立ちあがり、参考書をつかむと、ソファに置いていたランドセルにしまいこんだ。

「お姉ちゃん、お先! 行ってきまーす!」

 元気よく飛び出していく万理花。

 まったくもう。

 わたしはため息をつきつつ、トーストにイチゴジャムをぬる。