「最近病院へ行っていないみたいだな」


後ろから低い声でそう言われて海斗は思わず立ち止まり、振り向いた。


ギフトを受け取らなかったことを指摘されるのかと思っていたが、思わぬ方向から梓の話になってしまった。


「俺はなにも役立つことができない」


特に梓の病気に関して言ったことだった。


ギフトの中身に関しては読んでみないことにはわからない。


冷めた目で男を見上げていると、不意に胸ぐらを掴まれていた。


大きな男に胸ぐらを掴まれたことで海斗の体は少し宙に浮いてしまう。


そのくらい体格差があることを思い知らされて海斗は軽く奥歯を噛み締めた。


「今一番つらくて、頑張っているのは梓だ」


いつもお嬢様と呼んでいる男が、あえて梓と呼んだ。


自分が使えている人間ではなく、1人の少女として話をしているのだろう。


「俺は勝手に未来を変える救世主にされていい迷惑だったんだ」


むなぐらを掴まれたままで海斗が反論する。


しかしそれは本心からではなかった。


最初の頃はもちろんギフトが届くことに戸惑ったけれど、梓の存在を知った後は自分たちからギフトを贈り続けるように頼んだ。


梓は海斗たちを信じてくれているのだ。