「お嬢様の様態が悪化した」


男の言葉に一瞬2人とも氷ついてしまった。


様態が悪化したというのは、梓の病気が悪くなったという意味で間違いない。


海斗は無意識のうちに拳を握りしめていた。


さっきまで平気だったのに、心臓がドクンッと大きく跳ねて背中に嫌な汗が吹き出してくる。


「それって、どういう……」


どういう状況なのか質問しようとしたとき、男が車の後部座席のドアを開けた。


「行けばわかる」


低い声で言われて全身からサッと血の気が引いていく。


男がざわざわ学校まで自分たちを迎えに来たのだ。


ただ事ではないことは明白だった。


海斗と健は顔を見合わせて頷きあい、車に乗り込んだのだった。