暗黒ギフト2

『苦しみのない世界?』


『そうです。私と一緒に行きましょう』


女性が梓に手を差し伸べる。


梓はまるで誘導されるように手をのばす。


しかし、その手が触れ合う寸前のところで梓は自分の手を引っ込めていた。


このままこの人について行ってしまって本当にいいんだろうか?


そんな疑問がふいに浮かんできたのだ。


同時に病室で泣き崩れていた両親の姿を思い出す。


すると胸の痛みが舞い戻ってきた。


私は病室にいる自分の体に戻るべきじゃないんだろうか?


『どうしたの?』


女性は目を見開いて梓を見つめた。


自分の手を取らなかった人など今まで1度もいなかった。


そんな様子が見て取れる。


梓は少し申し訳ない気持ちになりながらも、おずおずと口を開いた。


『私は……元の体に戻れるんですか?』


『あなたはもう苦しまなくていいんですよ』


その声はまるで麻薬のようだった。