亮子が驚いた様子で訪ねて梓が「ちょっとだけ抜け出してきた」と、舌を出して見せた。


しかしその表情は暗い。


自分の執事が自分の友人の命を狙っていたのだから、当然だった。


「今まで亮子を狙ってきたのもあなた?」


梓が執事に向き直る。


「……そうです」


執事が観念したように答える。


梓は学校へは来ていないけれど、亮子と同じクラスだった。


普段両親代わりとなっている男が学校へ出入りすることは可能だし、クラスの情報を持っていてもおかしくはなかった。


なにより、秋吉の財力を使えばそのくらいの情報は苦もなく得ることができるはずだ。


「なんでそんなことを」


梓が苦しげな声で聞く。


男が口を開こうとした、その時だった。


梓が突然その場に倒れ込んだのだ。


顔は真っ青で呼吸が荒い。


「梓ちゃん!?」


亮子が叫んで膝をつく。


「お嬢様、しっかりしてください!」


男は青ざめ、急いで救急車を呼んだのだった。