友達はいないと断言していた梓に、今は何人もお見舞いに来てくれる人がいるのだから。


自分もその中のひとりだと思うと、なんだか誇らしい気持ちになる。


「でも、カナに声をかけてた男って誰なんだろうな?」


「さぁ? でも、このクラスについて詳しそうだよな。カナに目をつけたのもいいところだし、火事を起こそうとしたのなら、学校内に入り込めるような人間ってことだ」


海斗がそう言ったとき、一瞬だけある人物の顔が浮かんできた。


けれどそれはすぐにかき消した。


まさか、あの人がそんなことするはずがない。


亮子を危険な目に合わせる理由がない。


「どうした?」


「いや、なんでもない」


海斗は左右に首を振って、自分の考えをかき消したのだった。