白いドアを閉めた瞬間現実へ引き戻されて、2人は真剣な表情になってエレベーターを待つのだ。


その間の会話は少しもない。


誰もいないエレベーターに乗り込んで、ようやく海斗が口を開く。


「また痩せたかな」


「あぁ」


そんな短い会話だけですべてが理解できた。


海斗が再びお見舞いに来るようになってから、梓は見る見る痩せてきていた。


今までもそうだったと健は言うけれど、海斗は自分が梓に無理をさせているのでは無いかと感じて、気が気ではなかった。


楽しそうに笑う梓の声だって、日に日に小さくなっている気がする。


自分がそう思い込んでいるだけなのかもしれないけれど、やっぱり気がかりだった。


「お前がそんな顔してたら、梓ちゃんに心配されるぞ」


病院を出て歩きながら健が海斗の背中を叩いた。


「あぁ。わかってる」


海斗は小さな声で呟くように返事をしたのだった。