翌日も、その翌日も海斗と健はお見舞いへ向かった。


しばらくお見舞いに来ていなかった海斗は最初の2人目までは緊張していたけれど、それもすぐに慣れてしまった。


「こんにちはー!」


健と一緒に元気に挨拶をするのは5階ナースステーションにいる看護師たちに向けてだ。


看護師たちは健と海斗が来ると必ず挨拶をしてくれて、時々お菓子をくれるようになった。


患者さんの家族が持ってきてくれるお土産の残り物らしいけれど、海斗たちにとっては素直に嬉しかった。


「それでさ、そいつさがー」


海斗が学校内で起きた面白い出来事を話して聞かせる。


梓は興味津々といった様子で目を見開いてその話を聞いてくれた。


時折笑い声が漏れてくる病室に、看護師たちも海斗と健に関心した様子を見せている。


梓は1人のときずっとベッドから窓の外を眺めていて、滅多に笑うことがないらしい。


面白いテレビがあるよと教えても、自分から積極的に見ようとしないらしかった。


「笑えば病気なんて吹っ飛ぶんだぞ」


最後に海斗がそう言うと、梓は笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭いながら「そうかもしれないね」と、同意した。


だけど体力が落ちている梓に無理をさせることは禁物で、いつも2人の話は20分以内に収められるものになっていた。