「なに,言おうとしたの?」

「……秘密。だ,から。聞かないで」


風がへなへなと私から離れて,どっとその場にしゃがみこむ。



「漫画,越えてやろうと思…った」



不意打ちで,ズッと胸を打たれる。

死因,きゅん死。なんて聞いたことがあるけど,もしかしたら存在するのではないかとまで思った。

もうここまで来たら,最初から越えてるなんて言ってみても良いですか?

私も力が抜けて,風に覆い被さるようにして抱き締める。
 


「は…る」

「格好,良かった…よ? ありがとう」



彼女のためにここまでしてくれる彼氏,他にいますか? 

いても,絶対風が1番格好いい。

私は風を抱き締める力を,ぎゅっと強めた。

…。

どーしよ。
離れるタイミングが,分からない。