────遡ること約2時間前。



赤坂さんと茉央くんを両脇に従えながら、わたしは肩を狭くして教室に入った。

緊張が最高潮に達して心臓の音が外に聞こえてしまうんじゃないかと、本気で心配した。


教室にはもちろん、女の子はいなくて、髪色や雰囲気が豊かな男の子たちがいて。

わたしが入った途端、喧騒は沈んで静かになった。



だけど、すぐにザワザワとし始める。

はじめに学校へ来たときの不安が戻ってきて、少し怖くなる。


好奇の視線を浴びながら、なんとか声を出そうとしたけれど、緊張で喉が詰まって声が出ず。

どうしよう、とひとりで固まっていたら赤坂さんが助け舟を出してくれたんだ。



「うちのクラスの転入生のすずかちゃん。ちょー可愛いけど、“俺ら”のお気に入りだから手出さないでね」



その言葉によって、周りのみんなの態度が瞬時に変わったのを感じた。


この変化は、なんて言えばいいんだろう。

赤坂さんが、この学校において多大な権力を握っていることをまざまざと見せられた気がしたのかもしれない。