もう、キスだけじゃ足んない。



ガチャガチャガチャッ!


「ただいまー」

「ただいまー!」


!?


「杏と……」

「桃華!?」


ボソッと言った遥の声に、カッと目を見開く私。

そうだった!

桃華たち今日帰ってくるんだった!


「や、やばい……、服……!」


「落ちつけ胡桃。
大丈夫、大丈夫だから」


そっと体を起こしてくれた遥は私を腕の中に閉じ込めると、ゆっくり背中をなでてくれる。


「本当は俺が直したいけど、落ちつかないだろうから、俺がふたり引きつけとく。胡桃は服、直しといて」


「うん……っ」


ん、そう言って名残惜しいというように私をまたぎゅっとすると、ゆっくり体を離して立ち上がる。


「胡桃ー?遥ー?
いないのー?」


「いる」


「なにー?いるならおかえりくらい言ってくれてもよくない?」

「そうだよ。
せっかくお兄ちゃんが帰ってきたのに」


「おかえり」

「おそっ!」


玄関のほうで桃華たちと話す声が聞こえる。


やばい、やばい、急がないと……!

ガチャッ。


「胡桃ー、ただいまぁ」

「胡桃、久しぶり」


「お、おかえり、桃華!杏!」


な、なんとか間に合っ……。


「……」

「……」

「……」

「……」


「え、あたしたち、ぜったいお邪魔だったよね?」

「俺も同感」


「まあ、そう……」


「あーあーあー!
遥!時間!もう行かないと!」


「ちょっ、胡桃……!?」