【遥side】
「突然すみません、俺、橘さんのこと……」
「だめ。
胡桃は渡さない」
「遥……!」
「行こう胡桃」
「あっ、ちょっ、遥……!?
ごめんなさい!」
グイッと華奢な肩を引き寄せたまま、うしろをふり向く。
「ひっ……!」
俺の顔に真っ青になったそいつは走って逃げていく。
睨まれただけで逃げるような気持ちなら、はじめから告白すんなよ。
つーかそもそも、彼氏いる子に告白って男としてどうなんだっつーの。
俺いるってわかってるだろ。
「ありがとう、遥……来てくれて、」
「ん、ぜんぜん大丈夫」
ホッと胸を撫で下ろす彼女のつむじにキスを落として頭をなでる。
ほんと、これで何回目だよ……。
「また告白?
モテモテじゃん、橘」
「甘利」
授業おわりの休み時間。
胡桃を教室まで送り届けて、日誌を取りに職員室に行った帰りに甘利と会った。
「やっぱMateが原因?」
「そうなんだよ……」
Mateの撮影があった翌日。
『ミニスカポリスの美女!
なんとモデルmomoの妹ちゃん!』
なんて画像を編集部がSNSで拡散したせいで……。
「橘さん!ポリス服、めちゃくちゃかわいかったよ!」
「よかったらさ、連絡先交換しない?
彼氏に怒られるかな?」
顔、近づきすぎなんだけど?
「うげ……男ってほんと単純。
橘がかわいいことなんて、今に始まったことじゃないのに」
「今だけはおまえに同感」
てか、彼氏に怒られるかな?じゃねーよ。
彼女には怒んないけど、おまえには怒るよ?
だって、彼氏いる女の子に声かけるおまえのほうが頭おかしいだろーが。
「ねえ、だめかな」
「───ッチ」
「こっわ」