「将棋経験者って……。オレは中学の時に将棋部員だっただけですよ」

「立派な経験者よ!大丈夫、木村さんなら教えられるから!」

「無理ですよ!それにうちの会社って副業、NGじゃないですか」



やいやい言い合うふたりに私は、
「それって、仕事ですよね?」
と、静かに尋ねた。



木村さんも野口さんも、
「え?」
と、聞き返してくる。



「お給料が発生する、お仕事ですよね?」



重ねて確かめるように尋ねると、
「そうだと思うよ、よく知らないけれど……。でも月謝払ってるし」
と、野口さんが私を見つめた。



「貴島さん、誰か良い人材を知っているの?」



私は野口さんに大きくうなずき、
「どこの、なんていう将棋教室なんですか?詳しく教えてください」
と、スマートフォンのメモアプリを立ち上げた。