「なに、言ってるの」 「あなた達の娘はっ、マリスは…、もう死んだでしょう…?」 「ち、がう。違うっ」 「マリスは、盗賊に誘拐されたんですよね。…そして、殺されてしまった」 その言葉に、二人は現実を思い出すことを避けるように首を振る。 会場にいる貴族や国王たちは、知らなかった情報に目を瞠る。 「誘拐された挙句、抵抗したために殺されてしまった。 でも、あなたたちは信じなかった。生きていると思い込んで、マリスの亡骸を見ることもしなかった」