「我が息子のためによくぞ集まってくれた。存分に楽しんでいってくれ」 初めて見る国王陛下は、遠目でもわかるほど威厳にあふれた人物だった。 その隣に座る王妃陛下は、ずっと扇で顔を隠している。 王女が誘拐されてから、王妃陛下はずっと扇を手放さなくなったと聞いていた。 人前に出るときは必ず、持ち歩いているのだと言う。 (あまり笑わなくなったとも聞いた) 深い悲しみの表れなのだろう。