「そういえば、君は夏休み何をしていたんだ?」 「なにも。街にフラッと行ったり、図書室に行ったり」 「夏休みの間も図書室に通っていたのか。施設に帰ったりしなかったのか?」 「行きませんよ、迷惑でしょうし。…それに施設へは帰るんじゃなくて、行くですよ」 帰るは本当に自分の家の場合に使う言葉だ。 施設はもう家じゃない。 私に家はない。 「…そんなことないだろう。君の帰りを待っている人はいると思うぞ」