手はそのままに、中へとエスコートされる。 「しかし珍しいですね。ここに女性を連れだっていらっしゃるとは」 「まぁ、ね。この女性(ひと)は特別なんだ。…中々手ごわいけどね」 「…なるほど」 店長は二人がどんな関係であるかを、瞬時に理解した。 キース・ダランシェ公爵令息と言えば、甘い美貌でデビュタントからマダムまでを魅了し、 しかし、自分の胸の内は決して明かさない。 そのミステリアスな部分も相まって、魅了される女性が絶えなかった。