そう聞かれて、初めてルージュは人がいることに気づいた。
少し結界に夢中になりすぎていたと反省し、男性に向き直る。
ダークブラウンの髪に、コバルトブルーの切れ長の瞳。
そして黒縁のスクエアメガネをかけている。
見定めるように鋭い視線がルージュに注がれる。
(…怖くはないが、やはり警戒されているのだろうか)
ここには王族が通っているのだ、貴族でもない身元が知れない者が入り込んで何かあってはいけない。
ただの平民は特に警戒しなければいけないのだろう。
「…はい。今日からお世話になります」
特に臆することもなく答えると、相手は少しだけ驚いたようだ。



