「葉月さん、おはよう」


昨日のことをボーッと考えていると、急に声をかけられてハッと前を見た。

すると、目の前にはフワフワのロングヘアを左に流して、淡いピンクのシュシュで結んだ女の子の姿。

おっとりとした雰囲気のタレ目、どこか見覚えのあるような顔……の、ような気がするけど。


「お、おはよう。えっと、あの……」

「牧田だよ、牧田美波(まきた みなみ)。もう覚えてないかな? 幼稚園の時、友達だったんだけど」


目尻を下げて、少し自信なさげに笑う牧田さん。


牧田美波……その名前には確かに聞き覚えがあって。


「……あ、あっ!もしかして美波ちゃん!?」


あたしは少し考えた後、思い出した。


牧田美波ちゃん。
幼稚園の年中さんの頃に引っ越してきて、それから2年間同じクラスで仲良くなった。

小学校も同じで喜んでいたのに、お父さんの転勤が急遽決まって、1年生の夏前に引っ越してしまった。


引越しの前日、泣きながら『また遊ぼうね』って、約束したのを今でも覚えている。