「っ……」


『どうしよう』と、不安に顔を歪めながらも立ち上がる。

だけどすぐに後ろまで迫ってきていた子が、あたしを追い抜いて。


「がんばれー!」

「ひなちゃん、がんばってー!」


沢山の声があたしを応援してくれている。


『頑張らなくちゃ』と思う気持ちとは裏腹に、一生懸命足を動かしているのに、どんどん距離は開いて。


「っ、ごめんっ!」


今にも涙が溢れてしまいそう。

振り絞るように精一杯の声を出し、あたしを待っていたアンカーの男の子にバトンを渡した。


「大丈夫」


ひと言微笑んで声をかけ、走り出した男の子。


とっても綺麗なフォームでグングンと差を縮め、前を走っていたしろ組の男の子に近付く。


そして──。


真横に並んだふたり。

真っ白なゴールテープを先に切ったのは、赤い帽子を被った男の子。



ハアハアと息遣いが聞こえそうなくらい、膝に手を当て肩で呼吸をする。

そして、思い出したように顔を上げ、あたしに向かって満面の笑みでピースをした。


その瞬間、フワッと大きく風が吹く。



太陽のようにキラキラ眩しい。

その男の子は──。