「──ちゃん、ひなちゃん」

「え?」

「さっきからずーっとおはようって言ってるんだけど、ボーッとしてどうしたの?」


ハッとして顔を上げると、目の前には不思議そうに首を傾げる美波ちゃん。

あたしは慌てて膝上のスマホ画面を閉じて、「ごめんっ!」と謝る。すると、


「別に私はいいけど、ひなちゃん大丈夫?ボーっとして、今日は顔色も良くない気がするけど……もしかして空井くんと何かあったりしたの?」


あたしの手元をチラッと気にしながら、心配そうに美波ちゃんが聞いてきた。

あたしは思わず「あ……」と声を漏らして、ギュッとスマホを握る。


昨日あれから、ピアノのレッスンをお休みしてから、りっくんにちゃんと連絡出来ていない。

今朝もわざと避けるように、いつもより早く家を出て。

何も知らないりっくんから『今日は休み?大丈夫?』と、心配するメッセージが届いていた。


それに対してあたしは、何と返事したらいいのか分からない。