「っ、聞いて聞いてっ!」


教室の引き戸を勢いよく開け、飛び込むように駆け込んできたクラスメイトの女子。

その子は友達の元に真っ直ぐ向かうけれど、あまりの騒々しさに、周りの視線を全て集めている。

そして、例に漏れずあたしも、一体何事かとその子を見ていた。

すると──。


「今、校門前で藤沢くんと椎名さん見たんだけど、めっちゃ修羅場!」


え……?


「なんか藤沢くんが別れ話みたいなのしてたんだけど、すっごい揉めてて!」


息を切らして、興奮冷めやまぬ様子のクラスメイトの言葉に、びっくりして目を開く。


大地くんが女の子をフることなんて、珍しいことじゃない。

むしろ、3日で彼女が変わると言われている大地くんと、椎名さんは結構続いていたと思う。


それなのに、大地くんが別れ話をしていたということに驚いて、少し動揺している理由。

それは……。


「うわー、朝から別れ話で喧嘩とか、最悪だね」


他人事といった感じで言う美波ちゃんに、あたしは「そうだね……」とだけ返事する。


大地くんが別れ話と聞いて、思い出さずにはいられない昨日の言葉。


まさか……まさか、ね。
そんなこと、あるはずない。

そう思いながらも、あたしの手は微かに震えて──。