「熱がある……わけじゃなさそうだね」


手のひらをあたしの額に当て、りっくんが確かめるように言う。

触れられた部分にドキッとしながら、りっくんの優しさに微笑んだ。


「ごめん、ちょっとボーッとしてただけ」

「ならいいけど、昨日の今日だし、ちょっと疲れたんじゃない?ゆっくり休んで」

「うん、ありがとう……」


大地くんとは全然違う。

どこまでも優しいりっくんに、胸の奥が温かくなる。


「明日はレッスンの日だよね。朝は一緒に行けないんだけど早めに帰るから、終わったら部屋来れる?」

「え?」

「曲の練習っていうか、どんな感じでセッションするか考えたいなと思って」

「あっ、うん、そうだね!大丈夫!」


なんだ、そういうことか。
りっくんだもん、そうだよね。


『部屋来れる?』と誘われて、ほんの少しドキッとした自分が恥ずかしい。

勘違いを誤魔化すように、あたしが大袈裟なくらい大きく頷くと、


「良かった、楽しみにしてる」


りっくんはいつも通り、優しく微笑んだ。