「ねぇ、ちょっと聞いていい? スマホで写真の加工とか動画編集しちゃうって、本当?」

「まぁ、専用のアプリ入れれば……」

「ね、そっちのやり方も教えてくんない?」

「じゃ、じゃあ……。そのうち……」

「ね、ID交換してもらっていい?」

 互いにスマホを取り出す。

よく知っているやり慣れた操作なのに、動かす手はぎこちない。

マジで俺はいま泣きそうだ。

こんな憂鬱な場面が他にあるだろうか。

どうせならもっと普通の状況で、女の子とこういう会話がしたかった。

心の中で泣きながらIDの交換を済ますと、彼女と靴箱で別れる。

そんなに悲観せず楽しめ、楽しめばいいんだよ……とは思うものの、そう簡単に納得出来るものでもない。

しばらくして、彼女の方から送られてきたメッセージで、時間と場所を決める。

昼休みの自販機前テーブルだ。

そこなら人通りも多いし、二人きりになるなんてことは決してない。

「はぁ~……」

 ため息しか出てこない。

こんなに緊張するのは、人生初かも。

普通なら放課後の部室とかなんだろうな。

夕暮れの狭いごちゃごちゃした部室に二人きり。

そんな姿を想像してみる。

いいよね、そういうの。

憧れる。

だけど今回は俺のためにも彼女のためにも、この学校の安全と平和のためにも、そんな危険を冒すことは出来ない。

だって、急に正体を現し、暴れられても困るから。

色んな意味で、二人きりになるのは回避したかった。

そう思っているのに、約束の時間より随分早くにやってきて、彼女の分の席まで確保している俺って、マジでなんなの? 

だって座る場所がないからって、場所変えよっかとか言って、人気のない校舎裏とか体育館裏になんか連れ込まれたくない。

俺が死ぬ。

確実に食われる。

人生が終わる。