「私、どうしたらいいのかな」

「一緒に宝玉を探そう。そしてハクをちゃんと見送ろう」

「そ、そうだよね。それが正解だもんね」

「それがきっと、俺たちに出来る、できる限りのことだと思うよ」

 伸ばされた彼女の手を握る。

壁に足をかけた彼女を、思い切り引き上げた。

肩までの髪が揺れ、落ちそうになるのを抱き止める。

俺の腕の中にすっぽりと収まった彼女を、そっと離した。

互いの指先が伸びて、俺たちは手をつなぎ合わせる。

「行こっか」

「うん」

 すっかり暗くなってしまった森の中を、ゆっくり進む。

木々の隙間から見える街の明かりが、俺たちの視界を辛うじて確保していた。

「……。圭吾はさ、私とハクがころころ入れ替わってたの、気づかなかった?」

「うん? まぁ、何となくは……」

 分かってたところもあったし、なかったところもある。

「ゴメン。興味ないよね、こんな話し」

 積もった枯れ葉に足元が滑る。

踏みしめた小枝はポキリと折れる。

「すごく、楽しかったんだ……。どうやってお別れしていいのか、分かんない……」

「笑って『またね』って言えばいいんじゃない? いつものようにさ」

「はは。そんなの、ぜったい無理」

 彼女の足が止まった。

「ヤだよ。やっぱり行きたくない」

 舞香とハクの間にどんな友情があったのか、その過程を俺は知らない。

知らないから、彼女を慰める適切な言葉と対応が思いつかない。

それが俺の間違いだったとか、失敗だったってことが、いまの後悔になっている。

「俺が一緒にいてやるから、大丈夫だよ」

「……。そんなの、信じられない……」

「そうかもしれないけど、とりあえず今は信じてくれる?」

「……どうして急に、そんなふうになったの?」

「俺自身がキミを、気になってるってことに気づいたからだよ」

 裏門側から森の中を、学校の方へ戻るように進んでいる。

木立の間に見える校舎の位置から、そろそろ池の場所が近い。