「あのパネル! 学校のホームページに載ってたやつだ」

 スマホを開く。

学校史のページを開くと、森の中に沼のような深い池があり、その畔には小さな祠が写っていた。

「じゃあやっぱり……」

「この近くにあるんだよ」

 彼女と目が合う。

「探そう」

 俺たちは立ち上がった。

池の周辺には、整備された芝生が広がっている。

中庭にも校庭の隅にも、こんな祠は見たことがない。

「この近くっていっても、だけど校内にはないよね」

「だとしたら……。このなかに、まだ残されてる?」

 俺は夕闇に沈もうとしている、深い森を見上げた。

「ハク! お前、ここから出入りしてなかったか?」

「え?」

「なんか前みた時、ここから出てきてただろ」

 そうだ。

抜け穴があったはずだ。

小さな女の子になったハクが、この辺りの藪から飛び出してきていた。

俺はフェンスからはみ出した木の枝をかき分ける。

足元に直径十数㎝の穴が開いていた。

「ハク専用かよ」

 仕方ない。

乗り越えるには、高すぎるフェンスだ。

高さは6メートルくらいはある。

「山門の方から回ろう」

 歩き出した俺の後ろを、距離を保ったままの彼女がついてくる。

駆け出そうかとも思ったけれど、舞香にその気配がないから、ゆっくり歩く。

裏門から外へ出た。

 その道は、アスファルトで固められた急な下り坂だった。

左手に迫る原生林の植物の侵食を押さえ込むため、切り開いた断面をコンクリートで固めてある。

俺の頭より少し上くらいの高さだ。

乗り越えようと思えば超えられる。

見上げるその向こうには、1000年前から変わらない森がある。

どこからなら上りやすいだろう。

俺が先に上がって、後から舞香を……。