「おい、起きろ」

 体を揺すってみる。

何度かそれを試して、ようやく目を開いた。

「あ、あれ……。圭吾?」

「そうだよ」

 彼女はようやく、自力で身を起こした。

「なに? ……どういうこと?」

「記憶がないのか?」

「……。それはある」

「あぁ、よかった。それなら話しは早い」

 俺はため息をついた。

だったら荒木さんがここにいないのは、逆によかったのかもしれない。

「宝玉を探そう。手伝う」

 彼女はぼんやりとしたまま、じっと俺を見上げている。

「どこまで捜索が進んだのか、俺は知らないから。悪いけど聞かせて」

「嫌だ」

「どうして」

 彼女の目に、涙がこみ上げてくる。

ゆっくりと首を左右に振った。

「わ、私……約束したの。一緒にいるって……」

「それは、荒木さんと一緒に、地上でいたいってこと?」

「違う。それは、天上のルールで、出来ないから……」

「よかった」

 だとしたら、もう迷うことはない。

「あのヒトは、ハクに会いたくないんだって。そう言ってた。自分と会うことは、ハクにとってはリスクなんだって。それは、ハク。自分でも、分かってんだろ? 危険を冒して、こんなところまでやってきたお前の本当の望みは、宝玉を探しだして、そのヒトに会うこと。違う?」

 俺は、彼女の目をそっと見つめる。

「だけど、これ以上罪を重ねてほしくないんだって。だから、大人しく待っててって。そしたらちゃんと、会いにいくからって」

 最後のセリフは、俺が勝手に付け足した言葉だけど、それでもきっと分かってくれる。

ハクとあの白銀の龍なら大丈夫……。

あのヒトなら間違いなく、そう言うに決まっている。

彼女の頬を、涙が伝った。

「時間がないの。地上に降りていることが見つかったら、大変なことになるって……」

「多分あのヒトも、そのことを心配してたんだと思う」

「……。宝玉はね、戦後発見されて、元の池にあった場所に戻されたらしいの。だけど、この学校が建てられることになって……」

「じゃあ、学校建設前には、やっぱりここにあったってこと?」

 彼女はうなずく。

この学校は、最近建てられたものだ。

間もなく創立50周年を迎える。