そんなこんなで、憂鬱な学校生活が始まってしまった。

なぜ俺がユウレイに憑依された、危険人物のうろつく空間にいなければならないのか。

「昨日来てた子、みんな可愛かったよねぇ~」

 同じ写真部の山本は、教室の窓枠に頬杖をつき、校庭を眺める。

「お前、基本的に女の子全員好きだろ」

「まぁね~。そりゃそうでしょうよ」

 昼休み、演劇部の連中は新入生勧誘目的も兼ねて、校庭で発声練習をしていた。

その中に憑きものの舞香もいる。

「舞香ちゃん、めっちゃ色白いよね~」

 外をのぞき見る。

彼女だけ抜けるように肌が白い。

だけどそれは、顔色が悪いだけなんじゃないのかと思ったりもする。

取り憑いた悪霊はどうなった?

「あれで裏方だなんてもったいない……」

 そりゃ表に出る役なんて出来ないだろうよ。

どこで正体バレるかわかんないし。

いや、悪霊と決まったわけではないのか? 

どっちにしろ、気持ち悪いことには変わりないけど……。

カメラに残されていた画像には、ヘンなものは写っていなかった。

やっぱ心霊写真なんてものはウソってことなのかな? 

もしかして見間違いだったとか。

もういなくなっちゃてるとか? 

そんなくだらないことを考えたり、やめてみたりを、ここ最近はずっと繰り返している。

「なぁ山本。演劇部への協力って、いつまで続けんのかな……」

「俺はこのまま、永遠に続いて欲しい」

 くそっ。

コイツとは話しにならない。

1学年に5クラスある高校だ。

去年同じクラスだったってだけで、記憶に残さねばならないほどの出来事は何もない。

山本情報によると、現在彼女は2組らしい。

俺たちは5組で、L字型の校舎では使う階段も廊下も違うから、ほとんど接点もなかった。

だから「あの日」以降も、校内で顔を見なかったワケだ。

本来なら充実した学園生活を送るはずだった、俺の青春を返してほしい。

どうして恐怖におびえながら、学校で過ごさなくてはならないのか……。