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「どうしてあんなことをした!?」


弘人を家に連れ帰った祐次は怒鳴りながら小さな体をソファに突き飛ばした。


弘人はニヤついた笑みをうかべて「聡子はいい女だ」と答える。


ナメきった口調にカッと頭に血が上るのがわかる。


「家族に迷惑をかけるだけじゃ飽き足らないのか! 津田の家になんの恨みがある!?」


隣の家に恨みなんてあるわけがない。


小学校5年生の弘人にとって津田家のみんなはただの隣人に過ぎない。


そうわかっていても聞かずにはいられなかった。


「あはははは!」


途端に弘人は大きな声で笑い始めた。


お腹を抱えて、心の底からおかしそうに笑う。


「恨み? なに言ってるの? 俺はただ聡子がいい女だから抱きたいと思ったんだ」


声変わりもしていない、幼い声で信じられないことを言う。


祐次は目を見開いて自分の弟を見つめた。


これは本当に俺の弟なのか?


俺の知っている弘人なのか?


「もしかして、聡子の下着姿を見て兄ちゃんも欲情した?」


メマイがした。


今目の前にいる人間が誰なのかわからなくなる。


立っていられなくなって後ろのテーブルに手を突いたときだった、玄関が開く音がして両親が帰ってきた。