両親が帰って来る前に鍵の修理は完了していた。


あんなことがあったのに、こんなに簡単に直ってしまうことになんだか拍子抜けしてしまう。


できればこのくらい簡単に心の傷も治れば良いのに。


「鍵の交換はしないんですか?」


「今は、いいです」


しきりに鍵の交換を進めてくる業者にくるみはそう言い、お礼を言って帰ってもらった。


今鍵を変えたら両親が家に入ることができなくなってしまう。


それに、今回のことを話すかどうかは聡子が決めることだった。


聡子が両親に話をすれば、鍵の交換も視野に入れることができるようになる。


リビングへ戻ると聡子はヒザを立ててソファに座り、クッションを抱きしめていた。


聡子の視線の先にはテレビが置かれているが、電源は入っていない。


くるみはテレビをつけて聡子の隣に座った。


「鍵、直ったよ」


「うん」


聡子は小さくうなづくだけだ。


テレビも見ているのかどうかわからない。


くるみは聡子の手を握り締めてただ寄り添うことしかできなかったのだった。