「どうするお姉ちゃん、警察を呼ぶ?」


本来ならそうするべきだ。


聡子は本気で弘人に襲われそうになったのだから。


「警察を呼んでどうするの? 小学校5年生に襲われたって説明するの?」


聡子の声色は険しい。


世間的に言えば10歳が23歳を襲うなんて想像できないことだけれど、実際に被害は起きている。


こうして鍵を壊されているのを見ると、ほっておいていいとは思えなかった。


幸い、弘人が聡子の服に触れた形跡だって残っている。


あれを提出すれば、世間だって認めざるをえないはずだ。


しかし、自体はそう簡単ではなさそうだった。


隣の聡子はずっと震えていて、ついさっき経験した恐怖に足元から崩れ落ちてしまいそうなのだ。


子供だと思って油断していたけれど、弘人は信じられない力で聡子を押さえつけた。


それは大人の男に襲われるのと同じ恐怖だったに違いない。


「鍵だけは直してもらわないと」


くるみは小さな声で呟いたのだった。