服を着替えた聡子に暖かな紅茶を差し出し、くるみは隣に座った。


今は弘人も祐次もいない。


「今日はあまり体調がよくなくて、早引けしてきたの」


聡子はひざを立て、両手でカップを握り締めながら言った。


「家に帰って着替えをしてたら、突然あの子が入ってきた」


「玄関に鍵はかけなかったの?」


「かけたよ! でも、壊して入ってきた」


聡子の声は震えている。


初めて弘人に会ったとき、困ったような笑顔でやりすごしていた聡子を思い出す。


それがまさかこんなことになるなんて。


「鍵を壊した?」


「じゃないと入ってこれない」


自分が玄関から入ったときはどうだったろうかと思っても、思い出せない。


聡子の悲鳴が聞こえてきて頭の中は真っ白になっていたから。


2人して玄関へ向かい、鍵を確認してみると確かに壊されている形跡があった。


鍵穴にめちゃくちゃになにかを突っ込んだような跡もある。


それを見た瞬間くるみは寒気を感じて強く身震いをした。


弘人が、たった10歳やそこらの男の子がここまでして聡子を襲いに来たのだと思うと、全身が冷たくなる。