狂った隣人たち

「本当に、なにかあったらすぐに知らせてくれよ?」


学校から帰宅中にも祐次は何度もくるみにそう言ってきた。


今日だけで10回以上は同じことを言われているので、すでに耳にタコ状態だ。


だけど嫌な気はしなかった。


祐次が自分のことをここまで心配してくれているのが素直に嬉しいと感じる。


「わかってるよ。それに今日だってただラクガキされただけだし、大丈夫だよ」


「それならいいんだけどさ」


祐次はそう言いながらも不安げな表情を崩さない。


「できればくるみのそばにずっとついててやりたい」


そう言って手を握り締められたら、どうしても心臓がドキドキしてきてしまう。


祐次みたいに真っ直ぐでカッコイイ人にこんなことを言われたら、誰だってクラクラしてしまう。


くるみは照れている顔を隠すためにうつむいて歩いた。


そうしているとあっという間に家に到着してしまう。


歩調がゆるんだ祐次を見て、くるみも同じように歩調を緩める。


前を向くと見慣れた2件の家が並んで立っている。


「前さ、誰かが玄関先に立っているような気がしたんだ」


「え?」


不意に言われた言葉にくるみは戸惑った。


「男の人みたいに見えたんだけど、すぐに消えた」


「消えた?」


「うん。俺の見間違いだったのかもしれないけど……」


まだなにか言いたそうなまま、口を閉じる。