狂った隣人たち

夜中の騒音は3日続けて行われた。


その間ロクに眠ることができなかったうちの家族はついに我慢の限界が来て、翌日の朝を狙って隣の家に行くことになった。


「すみません隣の津田ですが」


チャイムを鳴らして声をかける父親を、くるみと母親は自分の家の玄関から見守っていた。


父親の隣には聡子がいる。


聡子は寝不足のせいで化粧が乗らないと文句を言っていたばかりだ。


「はい」


出てきたのは中年の男性だった。


借家だからか、引越しの挨拶には来なかったが、何度か挨拶くらいは交わしたことがある。


「あの、夜中に大音量で音楽流すのやめてくれません?」


ズバリ言ったのは聡子だった。


相当腹が立っていたようで父親の制止も聞かなかった。


「音楽ですか?」


「そうです。毎日毎日、夜中に流してますよね?」


「あぁ、そうか。そうですか」


隣人はニコニコと穏やかな笑顔を浮かべたかと思うと、玄関を開けたまま奥へと引っ込んでいった。


予想に反して理解のある人なんだろうか?


そう思っていると、すぐに男性は戻ってきた。


手になにかを持っているようだけれどくるみからは見えなかった。


しかし次の瞬間、隣人になにかを投げつけられた2人が悲鳴をあげて後ずさりをしていたのだ。