「そうなのかもしれない。でも、昨日は母親に怪我までさせたんだ」


「え!?」


予想外の言葉にくるみは目を見開いた。


「前に病院に連れて行ったときも、椅子を持ち上げて母親に襲い掛かろうとしてたんだ」


「嘘……」


くるみは自然と両手で口をおおっていた。


弘人のかんしゃくがそこまでひどいとは思っていなかった。


祐次もすべてをくるみに打ち明けることはためらわれていたのだろう。


空の青さがとたんに重苦しいものに感じられて、くるみはあえぐように首もとをゆるめる。


「それで、昨日はバッドを振り回してたんだ。それが母親の腕に当たった」


「そんな、大きな音なんて聞こえなかったのに」


「バッドは子供のプラスチック製だったから、怪我って言ってもたいしたことじゃなかったんだ」


早口に付け加えられて、胸を撫で下ろす。


それなら大きな音がしていなくても不思議はなかった。


でも、それが本物のバッドだったどうなっていたことか。


「どうして前回が椅子で、今回はプラスチックのバッドだったんだろう?」


くるみはふと感じた疑問をそのまま口にした。