狂った隣人たち

☆☆☆

「昨日はごめんな」


翌日、登校中に祐次が申し訳なさそうな表情でそう言った。


くるみも昨日のことはずっと気になっていたのだ。


「ううん、私は大丈夫だから。祐次は大丈夫だった?」


その質問に祐次は大きなため息で返事をした。


そんなことは今までなかったのでくるみの胸に不安が膨らんでいく。


「弘人のかんしゃくがどんどんエスカレートして行ってるんだ」


祐次は行きかう車の音にかき消されてしまうような、とても小さな声で言った。


それでもくるみは祐次の言葉を聞き逃さない。


「そうなんだ。前に病院に連れて行ったっていっていたよね?」


「あぁ。その時は引越しと転校のせいだって言われた。だから、環境に慣れれば大丈夫なはずなんだけど」


「もしかして弘人くん、学校に友達ができてないんじゃ?」


実はくるみがずっと懸念していたことだった。


新しい環境で友人を作るのは誰だって難しい。


弘人がうまく友人を作れたかどうか、実は学校内でとても無理をしているのではないか。


そんな心配は誰の胸にもあったはずだ。